使用者責任と従業員への求償


事業活動を営む企業にトラブルはつきものですが、皆さんの会社では、

何らかの事故により第三者に損害を与えた場合の対応策はあるでしょうか?


企業の事業活動の中で、会社の従業員が第三者に損害を与えた場合は、

被害者に対する損害賠償の話が真っ先に考えられますが、この被害者に対する

損害賠償は、使用者である企業と事故を起こした従業員のどちらがすべき

なのでしょうか?


法的な知識が多少ある方は、企業には使用者責任があるので、企業が被害者

に対して損害賠償を支払うことになると考える方がいると思います。


確かに、企業には使用者責任がありますので、従業員が業務中に起こした

事故からは逃げられませんので、基本的に、被害者に対して損害賠償を支払う

義務は発生します。


しかし、事故の被害者が、事故を起こした従業員にだけ損害賠償請求をした

場合にはどうなるのでしょうか?


そんなことがあり得るのかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、

現実にそのようなことはありうるのです。


事故の被害者は、基本的に、事故を起こした従業員だけに損害賠償請求を

することもできますし、使用者責任を問うて企業だけに損害賠償請求をする

こともできますし、企業と従業員の双方に損害賠償請求することもできる

のです。


要するに、誰に対して損害賠償請求をするのかは、事故の被害者次第なのです。


ということは、事故の被害者は、使用者である企業と事故を起こした従業員

以外にも、損害賠償請求をする可能性があるのです。


このように説明すると、使用者である企業と事故を起こした従業員以外の、

一体誰に損害賠償請求できるのかと考え込む方もいるかも知れませんが、

監督者責任ということも問われるとすると、事故の被害者から損害賠償請求

される対象は一気に広がります。


その監督者責任が問われる可能性がある人は、代表取締役、取締役、工場長、

現場監督、支店長、部長・課長などです。


ただし、現実的には、客観的に観察して、実際の業務において現実に使用者

に代わり事業を監督する地位にある者という定義に該当する者が、監督者責任

を問われる可能性があることに注意するべきです。


しかし、現実的には、事故の被害者は、たくさん損害賠償請求できそうな

企業に対して損害賠償を請求してくることがほとんどです。


そうすると、使用者である企業は、事故の被害者に対して、損害賠償金を

支払うことになるのですが、ここで問題なってくるのは、企業は、事故を起こし

た当事者である従業員に対して、支払った損害賠償金を求償できるのかとい

うことです。


結論からいうと、企業は、従業員に対して、支払った損害賠償金を求償

できるのですが、問題は、その金額です。


過去の裁判の判例を見ると、企業が従業員に対して、損害賠償金の全額を

求償することは不可能なようですが、使用者である企業が従業員に対して

求償できそうな金額としては、支払った損害賠償金の4分の1程度位が

1つの目安になるようです。


このことを、従業員の立場から考えると、業務中になんらかの事故を起こ

した場合は、自分自身も損害賠償金の支払から完全に逃れることはできない

ということになります。


また、監督者責任を問われる可能性がある人も、損害賠償金の支払から

完全に逃れることはできないということになりますので、このようなトラブル

という観点から考えても、しっかりとした経営危機管理体制の構築や社員教育

の徹底が求められるのです。


このように、企業の事業活動の中で、会社の従業員が第三者に損害を与えた

場合は、企業も使用者責任を問われ、事故を起こした従業員を管理監督する

立場の人も監督者責任を問われる可能性がありますので、そのようなトラブル

を予防するためにも、コンプライアンスを含む社員教育の徹底が必要といえます。


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