利益と利益率の違いを知っていますかと尋ねると、大多数の人は的確に返答
することができるのですが、利益の改善と、利益率の改善は、会社にとって、
どちらが重要なのかと尋ねると、一般的に、その答えは真っ二つに分かれます。
知っているようで、意外に理解されていないのが、利益と利益率の関係なの
ですが、この2つの財務指標は、経営管理の上でも非常に重要であるので、
しっかりと両者の関係と、経営において、どちらがより重要なのかを解説
したいと思います。
まず、財務指標という観点から、優れた会社をあげるとすると、
売上高営業利益率の高い会社は、必ずその優れた会社のグループに
入ってきます。
同業と比較して、営業利益率が高い企業は、確かに、優れた企業に間違い
ありませんので、利益率の改善は、企業にとって重要な経営課題といえます。
営業利益率が高い企業は、ブランド力が競合他社に比べて強力であると
言えるかもしれませんし、無駄を省いた効率的な経営管理がされている
企業と見ることもできるでしょう。
それと対照的に、売上高は、非常に大きいにも関わらず、利益率を確認すると、
非常に低い利益率の企業は、おそらく、優れた会社のグループに入ってくる
ことはないでしょうし、同業と比較して、営業利益率が低い企業は、第三者から
見ると、経営のどこかに、問題があるとみなされる可能性があるでしょう。
営業利益率が低い企業は、ブランド力が競合他社に比べて劣っていると言える
かもしれませんし、無駄が多く、経営が効率的にされていない企業と見る
こともできるでしょう。
ここで考えなくてはならないことは、利益と利益率の本質的な違いです。
利益とは、利益の金額そのものなので、利益の量を示しています。
それに対して、一般的に、利益率とは、売上総利益、営業利益、経常利益、
当期純利益などを、売上高で割ることで算出される比率のことなので、
利益率は、利益の質を示しているのです。
この利益と利益率の違いを確認する為に、A企業とB企業を比較してみる
ことにします。
まず、A企業は、売上高が100億円、利益が1億円、利益率が1%だとします。
一方、B企業は、売上高が1億円、利益が1千万円、利益率が10%だとします。
もし、皆さんが、A企業とB企業の、どちらか好きな企業の株式100%を
1億円で買収できるとすると、皆さんなら、どちらの企業を選ぶでしょうか?
おそらく、大半の方は、A企業を選択するのではないでしょうか。
その理由は、A企業の買収を選択した場合は、1億円投資しても、
1年で投資資金を回収できるので、B企業に投資するよりも、A企業に投資する
方が遥かに投資効率が高いので、大半の方は、A企業に投資することを選択
するのでしょう。
先ほどのA企業とB企業の例では、大半の方は、利益率10%のB企業よりも、
利益率1%のA企業を選択したことになるわけです。
もう一つ違う例で説明すると、C営業マンが、ある2つの案件が契約間近
だとします。
A案件は、受注金額が100億円で、利益が1億円見込まれ、B案件は、
受注金額が1億円で、利益が1千万円見込まれる案件です。
しかし、残念なことに、どちらかの案件しか契約ができないとすると、
C営業マンは、A案件とB案件のどちらを選択するでしょうか?
もちろん、C営業マンは、A案件を選択するはずで、この理由については、
あえて説明するまでもないでしょう。
2つの例を挙げて、利益と利益率の違いについて、説明しましたが、
これは至極当然なことですよね。
企業は、儲けてなんぼなので、幾ら利益率が高くても、利益の金額が少なけ
れば、投資家という観点から見ても、営業マンという観点から見ても、数字の
魅力はありませんし、会社経営という観点から見ても、利益の金額の方が、
利益率よりも重要なことは言うまでもありませんよね。
そうすると、企業経営においては、利益率よりも利益の方が重要なので、
利益の改善と、利益率の改善は、会社にとって、どちらが重要なのかと尋ね
られれば、その答えは、当然、利益の改善ということになるわけです。
ゆえに、企業が優先すべきは、量である利益であり、利益率は、利益の次に
優先することといえるのです。
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