コストダウンの方法


■コストダウンとは

コストダウンは製造部門だけでなく営業部門・間接部門にも必要

一般的に、コスト削減というと、製品原価を下げることを考えがちです。


しかし、経費削減は、製造部門のコストを低減させるだけでは不十分です。


なぜなら、仮に、製造コストダウンが図れたとしても、製造原価以外の費用

が多く必要であれば、企業として利益を多く計上することはできません。


また、製造原価が多かったとしても、製造コスト以外の費用が少なければ、

企業として利益を多く計上することができる可能性もあります。


このように考えると、コストダウンに取り組む時は、企業の各業務機能毎に

経費削減を考える必要があるわけです。


ところで、コストダウンといえば、より安い仕入先を探すことを真っ先に

考えてしまいますが、企業における経費削減は、より安い取引先を

見つけるだけではありません。


企業のコストは、調達する物の価格だけではなく、社員が、企業において

何らかの業務を遂行することで人件費として発生しています。


例えば、営業部門に所属する営業マンが、クライアントへ訪問する際の

移動時間であったり、間接部門の社員が、デスクワークに要する時間も

企業のコストなのです。


説明するまでもありませんが、企業に所属する各部門の社員が、

業務をより短時間で遂行することができれば、会社は、主要な経費である

人件費の支出を抑えることができたり、より少人数で企業経営を

することが可能となります。


ゆえに、経費削減に取り組む際は、より安い取引先を見つけるだけではなく、

会社に存在する各業務に必要な業務時間にまで踏み込む必要があるわけです。


■コストダウンは何時するべきか

コストダウンとは、説明する迄もなく経費の削減のことですが、

皆さんの会社では、経費削減という言葉を、どのような時に聞くことが

多いでしょうか?


おそらく、大半の方の会社では、業績が悪い時に、「コストダウン」

という言葉を、よく聞くことが多いはずです。


しかし、経費削減は、会社の業績が悪い時だけに、取り組むべきもの

ではありません。


そもそも、コストダウンをすることとは、ムリ・ムダ・ムラを突き止めて、

あるべき姿に改善することです。


ということは、会社の業績が良い時も、会社の業績が悪い時でも、

会社内には、ムリ・ムダ・ムラが存在しているはずなので、経費削減は、

会社の全社員が、日常的にムリ・ムダ・ムラを突き止める活動を継続

すべきなのです。


違う視点から説明すると、コスト削減をするべき時は、企業内に、

ムリ・ムダ・ムラが存在している時とも言い換えることができるでしょう。


ちなみに、ムリとは、何かをするために不足している状態のことで、

ムダとは、何かをするために過剰すぎる状態のことで、ムラとは、

ムリとムダが原因で発生する状態のことです。


このように、経費削減について掘り下げていけば、コストダウンは何時

するべきかは明白なので、会社の業績が悪い時だけでなく、会社の業績が

良い時にも、日常的にムリ・ムダ・ムラを突き止める活動を継続すべき

なのです。


■コストダウンの視点

皆さんは、コストという言葉を聞いた時に、どのようなイメージを

持たれるでしょうか?


一般的には、コストという言葉を聞いた時に、負のイメージを持たれる方が

多いようです。


その理由としては、「コストは避けることができない」、

「経費はかかるもの」という潜在意識があることが影響しています。


確かに、ビジネスをするうえでは、経費の発生を避けることはできません。


しかし、コストをネガティブな守りのイメージで捉えるのではなく、

経費をポジィティブな攻めのイメージで捉えることが必要でしょう。


要するに、コストがかかるという意識から、経費をかけるという

意識で考えることが重要なのです。


ビジネスの現場において、コストがかかるという意識を持つことこそが、

経費削減の視点が欠如しているといえます。


なぜなら、コストがかかるという意識を持っていると、現状に企業に存在する

全ての業務が必要であると錯覚してしまい、現状を変えることができないと

勘違いする、思考停止状態になってしまうからです。


しかし、コストをかけるという意識を持っていれば、経費をかける必要が

あるのかを常に問い、どんなことに経費をかけるべきかを考え、

コストパフォーマンスについても検討するようになるはずです。


このような、ちょっとした経費削減の視点が、企業のコスト競争力を

決定づける要因の1つになっているのです。


ゆえに、企業において経費削減を図ろうとするのなら、

まずは、全社員のコスト削減の視点を変える必要があるでしょう。


■コストダウンの進め方

コスト削減を進める際に気をつけるべきことは、各業務機能毎の部分最適

(局所最適や個別最適とも呼ぶ)を考えるのではなく、全体最適を目指すことが

重要です。


各業務機能毎の部分最適を重視してコスト削減を進めると、経費削減を

図る前よりもコストが大幅に増加するケースがあるからです。


例えば、製造業において、製造原価の経費削減を実現するために、

より部品を安価に調達できるように調達先を変更した場合を例にして

考えてみます。


仮に、部品のコストが従来より10%下がったとしても、部品の品質が

悪いことが影響して、不良品が従来より多く発生したり、各製造ラインに

おいて、余計な手間が増えて製造リードタイムが長くなり、全体の製造コスト

が20%増加してしまっては本末転倒なわけです。


ゆえに、各業務機能毎の部分最適だけを考えるのではなく、

全体最適を目指すことが重要なのです。


そうすると、コスト削減の進め方としては、企業全体の経費削減の方向性

を決定することから始めることになります。


次に、各業務機能毎に、その業務が本当に必要であるのかどうかを検討する

必要があります。


何故なら、会社の規模が大きくなり社員が増えてくると、社員が、会社にとって

必要のない業務を生みだしている場合があるからです。


実際に、一般的な企業では、このような無駄な業務が数多く存在しています。


このような理由から、各業務が本当に必要であるのかどうかを検討する際は、

その業務の目的や、その業務がどんなことに役だっているのかを把握する

ことで、不要な業務を削減することが可能となります。


このように、企業内に存在する各業務を吟味することで、

必要な業務と不要な業務を選別することができます。


そして、必要な業務については、その業務のあるべき姿を明確にすることで、

既存の業務を改善すると、どれくらいのコスト削減効果があるのかが明確

になるのです。


ゆえに、経費削減の進め方をシンプルに考えると、下記のようなステップ

に大別することができます。

コストダウンの進め方

①企業全体の経費削減の方向性を決定する。
②各業務が本当に必要であるかどうかを検討する。
③各業務のあるべき姿を明確にする。


■コストダウンのポイント(製造部門)

製造部門の経費削減のポイントは、製品の設計をどうするのかが最重要です。


製品の設計をどのように決定するのかが、製品コストを決定づけると

言っても過言ではありません。


例えば、設計の段階で製品の仕様をどうするのかを決めることが、

材料や部品の調達価格を決定することになりますし、部品の形状等を決定

することが、製造リードタイムを決定することになります。


製品の仕様によっては、自社で製品製造のノウハウが蓄積できている場合は、

自社の工場で生産することを選択することになりますし、自社で製品製造の

ノウハウがない場合は、外部に生産を委託するファブレス化を

選択することになるでしょう。


また、製品の組み立てやすさや、製品を販売した後のメンテナンスの

しやすさを考慮して製品の設計をすると、製造部門のトータルの製造コスト

を下げることにも繋がるわけです。


ところで、製造部門のコストダウンの基本は、5Sといわれています。


5Sの由来は、整理・整頓・清掃・清潔・躾をローマ字表記をすると、

頭文字が全てSとなっているところから、このように呼ばれています。


この5Sの目的としては、より効率よく業務が遂行できるように、

職場環境の維持改善を継続し、付加価値を高めることです。


ちなみに、この5Sの各項目の意味するところは、下記の通りです。

整理(Seiri)
必要なモノと不要なモノを選別して、不要なものを捨てること。

整頓(Seiton)
必要なモノを、決めた場所に置き、すぐに使用できる状態にしておくこと。

清掃(Seisou)
業務が遂行しやすいように、身の回りを常に掃除して、職場をきれいな
状態に保つこと。

清潔(Seiketsu)
職場で働く人が、気持ちよく働けるように、整理・整頓・清掃を実行し、
職場をきれいな状態に保つこと。

躾(Shitsuke)
職場で決められたルールや手順を守る習慣をつけること。


この5S活動を継続することが、製造部門において不要な経費を増加する

ことを防ぐことになります。


■コストダウンのポイント(物流部門)

物流とは、物的流通を略したものです。


この物流は、輸送、保管、包装、荷役、流通加工、物流情報に大別

することができますので、物流部門の経費削減を図る場合も、

この6つの視点から検討することになります。


物流コスト削減のために注意すべきことは、経費削減を優先して

納期が遅れないようにすることです。


いくら、物流部門のコストダウンが実現できたとしても、

クライアントへの納期が遅れたことが原因となり、売上が減少してしまえば

本末転倒といえます。


また、物流の経費削減の基本としては、物流の6つの視点である、

輸送、保管、包装、荷役、流通加工、物流情報の効率化を追求することです。


例えば、物流センターにおける代表的な業務としては、下記の業務を挙げる

ことができます。

物流センターにおける代表的な業務

・入庫管理(集荷・格納・検品・照合など)
・在庫管理(在庫照会・棚卸しなど)
・流通加工業務(荷札付け・ピッキング・小分け・組立など)
・出庫管理(検品・梱包・車両手配など)


上記の各項目を確認しても、各業務は様々な業務で構成されていますので、

物流の経費削減に取り組む際は、各業務を細かく分解して、

シミュレーションを行い最適な方法を決定することになります。


なお、日本ロジスティクスシステム協会が調査公表している主な

物流コスト削減策には下記の項目があります。

主な物流コスト削減策

・輸配送のアウトソーシング
・保管・仕分のアウトソーシング
・輸配送の共同化
・物流拠点の共同化
・輸送の大ロット化
・配送先数の絞り込み
・配送頻度の見直し
・物流機器の導入
・ピッキングの効率化
・保管の効率化
・包装の簡素化・変更
・包装容器の再使用、通い箱の利用など
・包装材の再資源化
・自社の物流部門の再編成
・物流部門の子会社化
・物流サービスの適正化
・物流拠点の見直し
・需要予測精度の向上
・物流情報システムの導入・改廃
・車両運行管理システムの導入
・バーコード、電子タグ等の導入
・物流を考慮した商品設計


■コストダウンのポイント(営業部門)

営業部門の経費削減のポイントは、営業活動をプロセス毎に考え、

計画的な営業活動を行うことです。


例えば、行き当たりばったりでクライアントを訪問するのではなく、

訪問スケジュールを計画し、その計画に沿って訪問のアポイントを入れたり、

ある顧客を訪問した際は、その近隣の顧客を訪問したりして、営業プロセス

の重要度や生産性を考慮し営業活動をすることです。


営業活動をプロセス毎に計画し、優先順位を考慮して営業活動をすることが、

営業活動を効率化して、営業のパフォーマンスを向上させることに繋がります。


そして、更なる営業部門のコストダウンを実現する為には、マーケティング

の強化が欠かせません。


どんなに優秀な営業マンが揃っていても、顧客のニーズを満たした商品や

サービスがなければ、簡単に契約を獲得することは難しいでしょうから、

「売れる商品の開発」が重要になります。


また、自社の商品やサービスを求めているクライアントと商談をしなければ、

成約率が向上することはありませんので、「ターゲットの明確化」が必要

なのです。


このように、営業の生産性を向上させるためには、マーケティングの強化が

欠かせないことは明らかです。


よって、営業マン1人当たりの生産性が倍になれば、営業マンの人数を半分

にしても、売上が落ちることはないでしょうし、営業マンの増員をしなくても、

売上高を大幅に増やすことも可能になるでしょう。


ゆえに、営業部門の経費削減のポイントは、マーケティングを強化して、

科学的に営業活動を管理し、営業生産性を向上させることといえるでしょう。


■コストダウンのポイント(経理・財務・人事・総務などの間接部門)

経費削減を考える上で、避けては通れないのが人件費です。


特に、一般的な企業では、企業規模が大きくなるのに比例して、

企業にとって不要な業務が増えていくので、経理財務人事総務

経営企画などの間接部門のコストが必然的に増加することになります。


そこで、間接部門のコストダウンを図る際は、自社の間接部門の社員に

任せきりにするのではなく、間接部門以外の第三者が、間接部門の各業務の

目的や、各業務がどんなことに役だっているのかの観点で、

必要な業務と不要な業務を選別することが重要です。


この経理・財務・人事・総務などの間接部門の経費削減のポイントは、

最初に不要な業務をなくすことです。


次に、必要な業務は、経営に必要なコア業務とルーチン業務に選別して、

ルーチン業務は、IT化、マニュアル化、アルバイト・パート社員の活用、

アウトソーシングを活用することが、コストダウンのポイントと

言えるでしょう。


上記のポイントにより、企業においてコスト削減を進めれば問題ないはず

なのですが、多くの企業では、なかなか間接部門の経費削減が進んで

いないのが現状です。


その間接部門のコスト削減を阻む要因の1つが、不要な組織が多すぎることです。


企業に不要な組織が多すぎれば、当然、不要な社員が多いということになり、

不要な社員が多れけば、必要の無い業務を行うこと自体が目的化してしまう

ような状態になります。


企業の体裁を繕うためだけに、企業に、経理部・財務部・経営企画部・

人事部・総務部・法務部などの組織を全て設ける必要はないのです。


企業は、コストダウンという視点から考えても、本当に自社に必要な組織

だけを設置すればよいのです。


しかし、このような組織に関することは、経営の重要な問題であるので、

経営者が指針を示さなければ、社員はどうすることもできませんから、

経営者が組織に関する方向性を示す必要があります。


また、惰性で行われているような業務が多かったり、担当者が頻繁に退職

することが多い業務、あるいは、特定の人だけしか把握していない業務なども、

経費削減の壁になっていることが多いといえます。


このようなことを考慮すると、企業が間接部門のコストダウンを図る際は、

経営に必要不可欠な業務は正社員に任せます。


そしてルーチン業務については、不要な業務をなくし、必要なルーチン業務

は、IT化・マニュアル化を徹底して、アルバイト・パート社員を活用する

ことで対応し、スポット的な業務に関しては、アウトソーシングを活用

するのです。


特に、現在は、弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、行政書士等の

専門家は世の中に溢れており、専門家を低コストで活用できますから、

下手な社員を採用する位なら、専門家を利用しない手はないでしょう。


ゆえに、間接部門のコスト削減を図る際も、必要な業務と不要な業務を

選別することが最も重要であるといえるでしょう。


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