No13・・・家賃交渉で固定経費削減
長引く不景気で、売上高が減少していく中で、利益を増やそうとすれば、
固定費の削減は避けては通れません。
その固定経費削減を実行に移そうする際に目に留まるのは、
会社の固定経費の中でも大きな項目である、事務所の地代家賃や店舗の家賃でしょう。
この事務所の賃料や店舗の賃料を引き下げる方法として取られている手段としては、
新たな賃料の安い事務所や店舗を見つけて、事務所や店舗を移転することでしょうが、
事務所や店舗を移転しなくても、事務所の家賃や店舗の家賃を、家賃交渉を
することにより、賃料の引き下げを実現することは可能です。
また、賃料の引き下げが可能な時期は、不況下でオフィスの借り手が減少している時であるので、
このような時期に、賃料の引き下げ交渉をすることは当然といえます。
しかし、現実には、家賃の引き下げ交渉をする企業は、まだまだ少数派のようであり、
賃料交渉をしても、上手くいかず固定経費削減に繋がらないケースがほとんどのようです。
ここで企業経営者や総務担当者が考えなければならない視点の1つとしては、
企業の代わりに賃料交渉をして家賃の引き下げによる成功報酬を収益源とする企業が存在することです。
このようなビジネスが成り立ってたいるということは、家賃の引き下げ交渉が成功する可能性は
充分にあるという裏返しともいえます。
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また、企業経営者や総務担当者に案外知られていないのが、借主は、借地借家法にて賃料の引き下げ交渉が
認められていることで、もし、この法律の存在を企業経営者や総務担当者が知っていたとしても、
事務所や店舗の賃貸借契約書に、賃料を減額しない旨の特約があるので、賃料の引き下げ交渉はできないと
諦めているケースもあるようですが、仮に、事務所や店舗の賃貸借契約書に、賃料を減額しない旨の特約条項が
あったとしても、最高裁にて、平成16年6月29日に、賃料を減額しない旨の特約条項が賃貸借契約書に
記載されていても、賃借人からの借地借家法第11条の規定に基づく賃料減額請求権の行使が
認められた事例もあるのです。
このように、借主は、貸主に対して、合法的に賃料の引き下げ交渉を出来る権利があることを
理解する必要があります。
そして、借主には、合法的に家賃の引き下げ交渉を出来る権利があることがわかれば、
次は、どのように家賃の引き下げ交渉をし固定経費削減に繋げるかです。
また、借主が、家賃の引き下げ交渉をする相手は、貸主ではなく、貸主代理の不動産のプロである
不動産業者が交渉相手になりますので、借主側は、賃料交渉に必要な法律を調査して、
家賃の引き下げ交渉の根拠となるデータを準備する必要があります。
尚、家賃の引き下げ交渉の根拠となるデータとなるものは、次の二つの項目は必須となります。
家賃の引き下げ交渉の根拠となるデータ
@経済事情の変動に関するデータ
■賃貸している周辺のオフィスビルや店舗の空室率と都心5区の空室率
■賃貸している周辺のオフィスビルや店舗の新規賃料と都心5区の新規賃料
■賃貸している周辺のオフィスビルや店舗の継続賃料と都心5区の継続賃料
■賃貸している周辺の地価の変動率と都心5区の地価の変動率
A周辺賃料との比較に関するデータ
自社の家賃と、周辺の家賃を比較する必要があるので、周辺相場も調べる必要がありますが、
周辺相場を調べただけでは意味がなく、自社の家賃の適正賃料も合わせて計算しておく必要があります。
この適正賃料の計算方法としては、現在賃貸している物件を継続して使用する場合の、
継続賃料が幾らなら妥当であるかを算出する必要があるので、その継続賃料の4つの計算方法である、
差額配分法、スライド法、利回り法、賃貸事例比較法を用いて適正賃料を計算します。
ちなみに、この継続賃料の4つの計算方法は、不動産鑑定士が適正な継続賃料を計算する際にも利用しています。
尚、継続賃料の4つの計算方法についての説明は下記の通りです。
@差額配分法とは、現在、賃貸借契約書で合意さている賃料と、新規に借りた場合の適正賃料との差額を、
現行賃料に加減する計算方法。
Aスライド法とは、現在、賃貸借契約書で合意さている賃料に、期間変動に伴う消費者物価指数等の
経済指数を乗じる計算方法。
B利回り法とは、土地建物価格に、継続賃料利回りを乗じた額から、必要経費を加算して求める計算方法
C賃貸事例比較法とは、周辺の、何回か更新を重ねた同じ様な規模、業種の現行賃料と比較する計算方法
これらの、賃料交渉に必要な資料を揃えた後は、いよいよ、家賃の引き下げ交渉をすることになりますが、
家賃交渉をする際の心得としては、貸主にも損にはならないこと、貸主にもメリットになることを
交渉の中心に据えて賃料値引き交渉を進めれば、家賃の引き下げ交渉の成功確率は高まるはずです。
このように、家賃の引き下げ交渉に限らず、自分の利益だけを主張しても、交渉は纏まるはずはないでしょうから、
自分が主張していることは、相手にも損にはならず、相手にもメリットがあることを交渉の基本方針とすべきでしょう。
尚、賃料の引き下げ交渉に必要になる、借地借家法第11条(地代等増減請求権)と
借地借家法第32条(借賃増減請求権)の条文は下記の通りです。
借地借家法第11条(地代等増減請求権)
1.地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、
土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、
又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、
将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の
特約がある場合には、その定めに従う。
2.地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする
裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる。
ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、
その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
3.地代等の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が
確定するまでは、相当と認める額の地代等の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した
場合において、既に支払を受けた額が正当とされた地代等の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による
受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。
借地借家法第32条(借賃増減請求権)
1.建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、
土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、
又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、
当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。
ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
2.建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、
増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。
ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、
その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
3.建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、
減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。
ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、
その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。
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